研究背景

ITと学習環境

近年のコンピュータの普及やそれに伴うインターネット環境の急速な普及は眼を見張るものがあります。私たちの周りでは今までにはなかったコンピュータを通してのコミュニケーション、コミュニティーが発達してきました。こうした環境の変化に伴い、外国語学習環境も変化しています。

ドイツ語教材開発研究プロジェクト

ドイツ語教材開発研究プロジェクトは、学部生、大学院生およびドイツ語研究室の専任教員で構成されており、学習者にとってよりよいドイツ語学習環境を整えることを目的として活動しています。特にIT(Webサイトやデータベースなど)およびマルチメディア(音声や画像、動画など)を活用しながら、教員と学生が共同でさまざまな教材の開発を行なっています。

プロジェクトのメンバーは、作成される教材が実際にSFCのドイツ語教育において用いられることを念頭に置き、学習者のドイツ語学習を促進させるための教材はどうあるべきか、といったことを教員とともに議論し、プログラミングやWebサイト作成といったそれぞれのスキルを活かしつつ、教材の立案・開発を行なっています。また、教材の利用者、すなわちSFCのドイツ語学習者からのフィードバックを参考にしながら、ドイツ語学習環境の更なる充実を目指しています。

SFCドイツ語教育との関連性

SFCのドイツ語教育はコミュニカティブ・アプローチ、問題発見・解決型のアプローチに基づいているため、学習者が自ら発信を行なうことに重点が置かれ、コミュニケーションを中心にしたペアワークが基本となっています。ドイツ語初級の授業には、ドイツ語インテンシブおよびドイツ語ベーシックの2つがあり、それぞれ、100分授業が週に4回のコース、90分授業が週に2回のコースとなっています。

図1 SFCドイツ語インテンシブの授業サイクル

実際SFCの授業では教科書"Modelle"のシリーズが用いられ、その1課分、4回(1週間)の授業のサイクルを示したものが図1です。1週間の授業は、(1) その課で扱う表現や文法を含んだキーセンテンス(Schlusselsatze)を「発見的に」学習し、(2) 実際の運用場面をビデオ・スケッチで学習、(3) そしてキーセンテンスで学んだ表現の基礎練習を行ない、(4) 学生同士のパートナーあるいはグループで応用練習を行なう、というサイクルで進みます。そして、その後の10分間テストで学習事項を確認し、次のサイクルに移ってゆきます。ドイツ語ベーシックは2週間かけてこのサイクルを進めています。ここで示されるように、表現・文法を「発見的」に学習する授業が週1回行なわれ、文型や単語についての確認、およびリスニングの試験が週1回の「10分間テスト」で行なわれてはいるものの、限られた授業時間と発話を重視する授業スタイルの中で、文法事項の復習に多大な時間を割くことは難しいのが現状です。

そこでドイツ語教材開発研究プロジェクトでは、コミュニカティブ・アプローチに基づいた授業の場合に不足しがちな文法や構文などの形式面での訓練を補うものとして、学習者が自律的に学ぶことができる環境の構築を目指し、教室外で使用するための教材の設計、開発を行なっています。教材開発にあたっては、教室内でできることと教室外でできること、教室内で実現できることとそれ以外の場で効果を上げることができることを検討し、それぞれにふさわしい教材をいろいろなかたちで提供することを念頭に置いています。

ドイツ語学習環境

当研究プロジェクトでは、SFCにおけるドイツ語学習環境のモデルとして、図2のような流れを提示しています。ドイツ語学習者が教室での学習を行い、その後に教室外での学習を行う、またその繰り返しがわれわれのイメージしている学習の全体像です。教室外での学習ではまた、その中でさまざまな教材、学習方法が用いられ、それらは有機的につながっています。

図2 ドイツ語学習環境